ごみばこ

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9A

部屋に来るなり開口一番暑いと文句を放ったナインは、何故だか座ってい本を読んでいるエースの腰にしがみついている。
何故、暑いのに接触してくるのか、エースにはナインの真意が読み取れない。

「そんなに暑いのなら離れたらどうなんだ?」
「俺が邪魔だってのかコラァ!」
「......」

促せば返ってくるのはこれだ。
何度離れる様に助言をしても一向に聞き入れる様子がない。
そのくせひっつきながらエースの体温が高いだの、暑いだのと文句を垂れている。
一体なんなんだ、と頭を抱えたくなった。
馬鹿だ馬鹿だと思っていたが、納涼の取り方すら忘れたチョコボ頭の知能を心配しつつも、エースは本を読むのに意識を戻す。
折角借りてきた新刊。いつもは常連の2人に負けて一番最後に借りているのだが、今回に限っては幸運にもたまたま立ち寄った時に入荷していたものを手早く借りれた。
それだからなのかクオンやクイーンよりも先に手に取った話はクリスタリウム内でも話題になる。
あの体力のないエースが新刊奪取バトルに勝ったのだと。
だから返却期限まではじっくりと読んでおきたい。ひっつくナインを無視して活字の羅列を見ていると、腹部の辺りで頭をぐりぐりと押し付けられる感触に擽ったさで気が散ってしまう。

「ナイン、読めない」
「あっちぃからブリザドBOMかROKしてくれよコラァ」
「ここでそんな魔法撃ったらすぐに隊長が飛んでくるぞ」

以前にジャックとナインが手合わせと称してチャンバラごっこをしていたら勢い余って壁に穴を空け、クラサメからのキツい小言と山程の課題を渡されていたのを思い出す。
エースが構ってくれないのを悟ったナインはこれ以上邪魔して追い出されるのも嫌なので、エースの膝の上に頭を乗せて空いた窓から聞こえる同級生の声とそよぐ風の音を聞きながら目を瞑った。
カラン、とグラスの氷が溶けて崩れる音が部屋に響く。
任務も無く、平和なのはいい事なのだろうが体を動かすのが好きなナインとしてはこうしてダラダラと室内で過ごすのはやはり性にあわない。読み終わったくらいにまた来ればいいか、と思案し、上体を起こすと背中から「ナイン」と呼ばれた。

「あ?なんだ...、っ!」

振り向くと同時に不意に寄せられた唇。
呆気に取られて半開きになった口の中に冷たい塊が入り込んで、ナインは目を見開いてギョッとした。

「ブリザドROK...なんてな?」

歯で砕けば言葉の意味通り口の中の冷たい物体が氷であるのが分かった。
恥ずかしいのに暑いと言うナインの気持ちを汲んでやったのだろう。フフッと微笑むエースの頬は僅かに桃色に染まっている。

「なんだかお腹が空いたな、リフレでも行こうか」
「本はいいのかよコラァ」
「それでナインがどこかに行くのは寂しいからな」

本を閉じたエースはテーブルの上にそれを置くと、ナインの頭を愛おしそうにゆっくりと撫でる。
なんだかとても心地好くて、ナインはエースを思わず強く抱き締める。残暑も厳しい暑さなのに、何故だかナインはそうしたかった。
気の利いた一言も言えない自分に腹が立つ。
何か言葉の1つでも言える為にちょっとは勉強でもしようと決意し、それが僅か3時間で集中力が切れるのもナインらしいと言えばナインらしかった。