ごみばこ

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君は素肌をさらさない方がいいと私は思うのだが

その日は1日暑かった。
気温が高いのは仕方がないにしても、湿度まで高いせいで部屋の中の体感温度はとてつもなく高かった。
おまけに風もないせいでもやっとする室内の不快感に眉を顰めると、サンダルフォンはその不快感を解消する為に仕舞っていた扇風機を取り出し、コンセントを挿してスイッチを入れた。
ブオオン、と電気音の後に回り出す羽。
少しはマシになるか、と床にぺたりと座り、送られる風を全身で受けて少しでも涼もうとした。
黒のノースリーブのパーカーの下に着ていた白のハイネックは既にテーブルの近くに脱ぎ捨てていたので、直に風が当たって気持ちいいと感じる。あー、と緩んだ声を発しながら涼んでいると、不意に玄関から音がした。

「おかえりなさい、ルシフェル様」
「ああ。ただいま」

買い物帰りらしいルシフェルはその手にビニール袋を持っていて、靴を脱ぐと扇風機の前で寛ぐサンダルフォンの傍へと向かう。

「暑いからアイスを買ってきたよ。食べるかい?」
「はいっ、いただきます!」

ガサガサとビニール袋から棒アイスを出して手渡すと、サンダルフォンは嬉しそうに笑って受け取った。
見上げる仕草は何とも可愛らしく、やはりサンダルフォンは安寧、と考えていると、ふと上から覗くパーカーと肌の隙間が気になった。
昼間の明るさで見えているのは暑さのせいで薄らとピンクに色付いたツンと尖ったなにか。
まさか、そんな。
ルシフェルは瞬いてもう一度見下ろす。
パーカーの隙間から見えるのはやはり乳首だ。乳首なのだ。
胸にある体の部位と言えば当たり前なのだが、ルシフェルは目が離せない。
アイスを舐めるのにチロチロと覗く舌、暑さで鎖骨から胸元へと流れる汗が扇情的で昨晩の情事を思い出される。
真昼間から刺激の強い姿を晒す愛し子にルシフェルは片手で目を隠すと、ひとつ咳払いをする。

サンダルフォン...、その...君の素肌が...」
「俺?俺がどうかしたんですか?」
「上から君の見てはいけないものが見えてしまっている」
「は?」

ルシフェルに告げられて、胸元に目線をずらせばパーカーの隙間から見えるピンク色の乳首。
それどころか見えている肌のあちこちに紅い鬱血痕があり、それがルシフェルに抱かれた証なのだと主張していてカァっと顔が熱くなる。

「なっ...!!」

思わず胸元をギュッと握って隙間を無くすと、ギロリとルシフェルを睨み付けた。

「あ、あんたどこ見てるんだよ!!」
「すまない...」

昼間から盛るな!と顔を真っ赤にして抗議するサンダルフォンルシフェルも狼狽えてどうしたものかと目を隠したまま「君をそんな目では見ていない」とよく分からない弁解を始めた。