ごみばこ

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推しはさんだゆ

「友よ、見て欲しい」
空の世界の見聞を半月程終えて研究所に戻ると、その足でルシファーの元へと向かった。
俺は忙しいと一蹴するルシファーを無視して(意図的ではない)机の前まで来ると、手にした鞄を見せた。
「...、それは一体なんだ」
「私のサンダルフォンだ」
サンダルフォンを模した20cm程の大きさの手触りの良さそうなぬいぐるみが鞄に括り付けられている。
可愛らしくデフォルメされたそれは、どう見ても偉大なる天司長には不釣り合いだ。
軽く眩暈がしたルシファーは頭を抱えて、鞄を指差す。
「そうか...それはよかったな。所で何故アレが鞄についている?研究所内でもそんな愚かな物を売ってないだろう」
ルシファーの問い掛けに口角を緩めると、ルシフェルは穏やかな笑みを浮かべる。
「見聞の際、空の民は己が愛おしいと想うものを自らの手で創り出し、それを飾ったり身に付けたりする風習があるようだ。この大切で大事な人が出来るのを空の世界では【推し】と言うそうだ。だから私も空の民の習わしに沿って愛おしいサンダルフォンを作ってみた」
お前はそんなに饒舌だったのかと疑いたくなるくらい口数の多いルシフェルにややげんなりしたルシファーは胃が痛くなるのを我慢してそうか、とだけ返すとにっこりと笑った顔をしているサンダルフォンのぬいぐるみをやつれた様子で見つめた。